膝痛 2011:10:05:08:03:00

2011年10月 5日

 「健やか通信」と言うインターネットの情報に面白い記事が有りました。ひざ痛で悩んでいる方への整形外科医のコメントです。ひざ痛で悩んでいる方は参考にしてください。

水を抜くと癖になる
 外来で“水(関節液)を抜く”処置をするときによく聞かれますが、結論的には、“×”です。抜いたからくせになり、溜まりやすくなるのではなく、水が溜まる原因となっている炎症が治らないと水を抜いてもまた水が溜まるのです。“水(関節液)”とは、ひざの軟骨、ひざを取り囲んでいる滑膜などに問題が生じて、ひざの中で炎症が起こった場合に、滑膜から関節の中にしみ出てきたものです。私はひざの水を抜くときに炎症を止めるためのお薬を関節に注入して、炎症を抑えることを試みています。溜まった水をそのままにしたから、さらに問題が発生する、ということも基本的にはありませんが、大量に水が溜まるとひざの曲げ伸ばしのときに圧迫されるような痛みがでたり、ひざ周囲の重だるさがでたりするので、それらの症状がある場合には関節液を抜いたほうがいいと思います。

動かすべきか、休むべきか
 軟骨という組織は血液が循環していない、とても栄養の供給の悪い組織です。栄養補給の方法は、軟骨のスポンジのような構造がヒントになります。ふだん軟骨は水をたくさん吸い込んだスポンジのような状態です。しかし、体重をかけるような負荷がかかると、スポンジがつぶされた状態になります。このときに水分は吐き出されます。そして、負荷がかかり終わると、再びスポンジが広がるときに水分を吸い込むように、軟骨も周囲の水分などを吸い込んでいきます。これが軟骨の栄養供給となります。つまり、体重をかけることが、栄養供給につながると考えられます。負荷をかけ過ぎて軟骨を痛めてしまうのも危険ですが、軟骨への栄養補給という面からも痛みのない範囲で、無理なく負荷をかける散歩など、軽い運動を行うこともよいでしょう。

筋力トレーニングが膝に良い
 筋力トレーニングそのものがひざの痛みをとるものではないと私は考えています。しかし、ひざはからだの重さを支えなくてはいけない関節です。腹筋、背筋、太ももなど、からだを支える筋肉がしっかりしていないと、ひざへの負担が増えることが考えられ、痛みを強くしてしまう可能性はあると思います。特に太ももの前面にある筋肉(大腿四頭筋(だいたいしとうきん))を鍛えることで、ひざ関節にかかる衝撃をやわらげ、負担を減らすことができます。
 また、私が代表を務めるNPO法人「腰痛・膝痛チーム医療研究所」のスタッフである理学療法士の金先生(健康科学大学教授)は、背骨と両脚のつけ根(脊椎と大腿骨(だいようきん))を結ぶ唯一の筋肉である大腰筋の重要性を指摘しています。大腰筋は下図のようにからだの深部にあり、背骨や骨盤を支える、太ももを上げるなどの役割をはたす筋肉です。過去の研究では大腰筋の断面積が大きいほど、歩行能力が高い、日常生活の活動性が高いという結果※も得られており、今後の研究が期待されます。日常の動作で大腰筋を鍛えるのは、階段の上がりです。ひざが痛い方は無理なさってはいけませんが、可能な方は、上りは階段下りはエスカレーターを利用するなど毎日の暮らしのなかで工夫をしてみるのもよいでしょう

      大腰筋.gif

 

     膝のトレーニング.gif

磐田 振一郎
 慶應義塾大学医学部卒業。同大学大学病院勤務後、2004年より米国スタンフォード大学工学部生体医工学研究室で客員研究員。帰国後整形外科医として、膝関節疾患を中心とした治療を専門とし、ひざの動作解析や、MRIによるひざ軟骨の測定などを研究。NPOの「腰痛・膝痛チーム医療研究所」代表理事。武蔵野陽和会病院、石井病院(伊勢崎市)、古河病院(古河市)、台東区立台東病院整形外科医。

(健やか通信 整形外科医による膝と骨の話 引用)



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