万理一空 2011:10:03:05:57:55

2011年10月 3日

 先日、大関昇進が決まった「琴奨菊」の口上に使われた四字熟語は「万理一空」でした。理事会の満場一致で大関昇進が決まったことを使者の二所ノ関理事(元関脇金剛)に伝えられると、琴奨菊は「大関の地位を汚さぬよう、万理一空の境地を求めて、日々、努力精進致します」と口上を述べました。

 万理一空は、さまざまな意味に解釈できる言葉で、元巨人の桑田真澄氏も「万里一空」として座右の銘にしています。琴奨菊は「すべての理論は一つの結論へ通じる」ととらえました。後援者から提案された「朝鍛夕錬」「一意奮闘」「意思堅固」の中から朝鍛夕錬に決めかけましたが、稽古以外のことも相撲道の糧にしたいと思い、差し替えたそうです。

 秋場所ではイチローや魁皇の本から一流アスリートの心理を学び、平常心を保つため稽古後は仕切りの動きを繰り返し確認しました。書や水墨画など剣の道とは違う分野での活動を強さに結びつけた武蔵と、稽古以外の努力を結果に結びつけた自分を重ね合わせました。

 相撲を教えてくれた祖父・一男さん(故人)への思いは「一」の字に込めました。「感謝の気持ちを忘れずに、これからも一緒に戦っていきたい」と決意を新たにしました。10月中には故郷の福岡・柳川市を訪問し、一男さんの墓参りや川を利用した水上パレードなどの催しに参加する予定です。

 柳川市の後援会は先を見据え、横綱土俵入り用の三つぞろいの化粧まわしを贈呈することも計画しています。かかる期待は大きいが「強く愛される大関になりたい」。4年ぶりに生まれた日本人新大関の笑顔がはじけました。

◆万理一空(ばんりいっくう)の意味

 宮本武蔵が長年の修行で到達した精神的境地で、著書の「五輪書」では「山水三千世界を万理(里)一空に入れ、満天地とも攬(まとめ)る」と動揺せずに冷静であることが望ましいという心の持ちようを説いた。「どんなに遥か遠くまでいっても、空は1つしかない。すべてのものは1つの世界にとどまっている」の解釈から、現在では「目的、目標、やるべきことを見失わずに励む、頑張り続ける」の意味3 件で使われることが多い。元プロ野球選手の桑田真澄氏の座右の銘でもあり、日本ハム斎藤佑樹投手に渡した色紙にも書かれていた。

歴代大関、横綱の伝達式口上

2011年11月 大関:琴奨菊和弘「万里一空の境地を求めて、、、」
2010年5月 大関:把瑠都凱斗「栄誉ある地位を汚さぬよう努力いたします」
2009年1月 大関:日馬富士公平「全身全霊で相撲道に精進します」
2007年9月 大関:琴光喜啓司「いかなるときも力戦奮闘し相撲道に精進いたします」
2007年7月 横綱:白鵬翔「精神一到を貫き、相撲道に精進いたします」
2006年5月 大関:白鵬翔「全身全霊を懸けて努力します」
2006年1月 大関:琴欧州勝紀「稽古に精進します」
2003年3月 横綱:朝青龍明徳「相撲道の発展のために一生懸命頑張ります」
2002年1月 大関:栃東大裕「稽古に励み、努力精進致します」
2000年9月 大関:魁皇博之「稽古に精進します」
2000年7月 大関:雅山哲士「初心を忘れず相撲道に努力昇進致します」
2000年5月 大関:武双山正士「常に正々堂々、相撲道に徹します」
1999年9月 大関:出島武春 「力のもののふを目指して精進、努力します」
1999年7月 横綱:武蔵丸光洋「心、技、体に精進いたします」
1999年3月 大関:千代大海龍二 「相撲道に精進、努力いたします」
1998年7月 横綱:若乃花勝「堅忍不抜の精神で精進していく」
1995年1月 横綱:貴乃花光司「不撓不屈の精神で相撲道に不惜身命を貫く」
1994年3月 大関:武蔵丸光洋「心技体に精進致します」
1994年3月 大関:貴ノ浪貞博「相撲道に勇往邁進する所存です」
1993年9月 大関:若ノ花勝「一意専心の気持ちを忘れず相撲道に精進する」
1993年3月 横綱:曙太郎「横綱の名を汚さぬようけいこに精進いたします」
1993年3月 大関:貴ノ花光司「不撓不屈の精神で相撲道に精進」
1992年7月 大関:曙太郎「稽古に精進します」
1990年9月 横綱:旭富士正也「健康に注意しながら心技体の充実に努めます」
1990年5月 大関:霧島一博「一生懸命頑張ります」



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