パンとサーカス 2011:02:08:07:13:47

2011年2月 8日

 一昨日(2月6日)行われた、名古屋市長選と愛知県知事選は、地域政党を率いて「減税」を掲げた河村たかし、大村秀章両氏がそれぞれ制しました。同時に市で行われた住民投票では市議会解散が決まり、河村氏の戦略通りの結果となりました。河村氏は「名古屋の皆さんが民主主義の時代に一歩を踏み出した歴史的な日だ。」と語りましたが、非常に怖い話だと思います。反対に議会制民主主義を壊す話ではないでしょうか。市民に耳触りの良い政策を掲げ市民の圧倒的な人気を得る手法は、ポピュリズム(大衆迎合主義)そのものではないでしょうか。現在の民主党政権と同じ過ちを犯そうとしているとしか見えません。市長の思いを議会が聞かないから、市長自ら先頭に立ち住民投票を先導する方法は、独裁政治そのものだと思います。現在の二元代表制は、戦後の日本の地方自治を支えてきました。議会のチェック機能を否定するものだと思います。テレビ等に露出の多い首長が、人気を逆手にとって政策を訴え、首長が思い通りの行政を行うという、大阪府も同じことが言えるのではないでしょうか。

 政治評論家の三宅久幸氏が、「民主主義の醸成は時間とコストがかかるものだ。粘り強く努力していくしかない」と言っておられました。私もそうだと思います。

 【八木秀次高崎経済大教授は、河村氏の手法に漂うポピュリズム(大衆迎合主義)政治の危険性をこう指摘する。「市民に分かりやすい政策だけで、古代ローマの政治手法『パンとサーカス』だ。パンは減税、サーカスが敵を作り上げてやっつけることだ。

 既成政党への国民の不信が強まる中、個性的な首長が率いる地域政党は、閉塞(へいそく)感が蔓延(まんえん)する地方自治の起爆剤となる可能性はある。一方で、首長と議会が相互にチェックし自治体の意思を決定する「二元代表制」の原則が崩れかねないとの指摘もある。その在り方を見直す契機にもなるかもしれない。】と産経新聞で述べておられました。

パンとサーカス(ラテン語: panem et circenses)
 詩人ユウェナリスが古代ローマ社会の世相を揶揄して詩篇中で使用した表現。権力者から無償で与えられる「パン(=食糧)」と「サーカス(=娯楽)」によって、ローマ市民が政治的盲目に置かれていることを指摘した。パンと見世物ともいう。ガス抜きや愚民政策の例えとしてしばしば用いられている言葉です。

 高校入試の教科書ですと、「パンと見世物」という表現がされています。これはユウェナリスというローマの風刺詩人の言葉で、「パンと見世物によって魂を買収された平民・・」について書いています。
 これには共和政時代(皇帝が登場する以前)の二大戦争の影響があります。ポエニ戦争とマケドニア戦争という、地中海の覇権を巡った熾烈な戦いのあと、もともと農業国であったローマの平民(中小自作農民)が、この長年の戦争への従軍で財産である土地を失ってしまいます。さらに戦争で獲得した「属州」から、非常に安い農作物がローマに入ってきたために、平民の農業経営は行き詰ってしまいます。
 そんな中、有力者たちは、平民が手放した土地を買い占めて、戦争で獲得した奴隷を投入して大規模な農業経営を始めます。これを「ラティフンディウム」といいます。離農してしまった農民とその家族の多くは首都ローマに流れ込み、「食事と娯楽」、いわゆる「パンと見世物」を要求するようになります。有力者で野心家たちはこれをいいことに、食事と娯楽(コロシアムで繰り広げられる模擬戦争やグラディエーターによる殺し合いなど)を提供し、名を売ります。さらに没落した平民を傭兵として使い、自分の野望を遂げるために利用したりしました。そのような状況が続き、「自分の国は自分で守る」という原則が崩れ、野心を持った有力者が幅を利かせる時代、「内乱の1世紀」へと突き進んで生きます。
 「パンと見世物」はこのような状況を皮肉って表現されたものです。

                    (教えて!Goo)引用

 



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